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「自衛戦争」と「(戦力としての)自衛隊」に関する世論調査

「自衛戦争」と「(戦力としての)自衛隊」に関する世論調査

これまで、新聞や雑誌が「憲法記念日前後」などに特集を組む場合は「9条を変えるか否か」といった世論調査の結果を掲載しつつ記事を組むことがほとんどです。今回、私たちは、週刊誌『AERA』の協力を得て9条改正の賛否ではなく、 「自衛のための戦争をすること」を認めるか? 「(戦力としての)自衛隊の存在・活動」を認めるか? に関する世論調査調査用紙ですを実施しました。 近年の世論調査で「9条支持者(9条は変えないほうがよいと考える人)」として数値化されている6割~7割の人の中には、「自衛戦争なら認める人」と「自衛戦争でも認めない人」が混在しています。これでは、「日本が戦力を持ち、戦争(交戦)することを認めるか否か」という本質的な問題に関する主権者・国民の意思を正確につかみとることはできません。それゆえ、これまでの調査とは異なる今回のような設問での調査を行うことにしました。 調査期間は、本年3月29日~4月8日の11日間。東京都、大阪府、愛知県、京都府、奈良県など11都府県の駅ターミナル、スーパーの駐輪場、飲食店、大学キャンパスなどで、情報室のメンバーや大学生らが対面調査し、一部回答の人を含め700人から回答を得ました。 なお、週刊誌のAERAが5月9日発売(10日発売の地域もあり)の号で、この調査結果(数値及び回答した人々とのやりとり)と、それに対する伊勢崎賢治、井上達夫、上野千鶴子、小川和久、小黒純、香山リカ、櫻井よしこ、西修さんらの見解・意見を掲載しています。ぜひ御覧ください。

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※調査用紙

【自衛隊、自衛戦争、憲法9条に関する世論調査】

お名前などは記さなくてけっこうです。御協力をお願いします。 御自身の考えと一致するほうに〇を付けてください。
[自衛戦争について]
① もしも、よその国家や武装組織が日本を攻撃してきた場合、あなたは、
[A]日本への攻撃を防御する自衛のためなら、日本が戦争(交戦)することを認める。

[B]たとえ日本への攻撃を防御する自衛のためであっても、日本が戦争(交戦)することを認めない。

② この「自衛戦争をするかしないか」に関して、あなたが①で選択した考えを、日本の国家意思(国としての考え、姿勢)とするには、今の憲法9条との整合性を図るために、これ(9条)を改める必要がありますか? その必要はありませんか?
□改める必要はない。

□改める必要がある。
どんなふうに改めればいいと考えますか?
[自衛隊について
あなたは、(災害救助とは異なる)自衛のための戦力としての自衛隊の存在・活動を認めますか?
[A]認める。

[B]認めない。

② この「戦力としての自衛隊の存在・活動」に関して、あなたが①で選択した考えを、日本の国家意思(国としての考え、姿勢)とするには、今の憲法9条との整合性を図るために、これ(9条)を改める必要がありますか? その必要はありませんか
□改める必要はない。
□改める必要がある。
どんなふうに改めればいいと考えますか?
第2章 戦争の放棄 第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
御協力、ありがとうございました。
[国民投票/住民投票]情報室

この調査結果(数値及び回答した人々とのやりとり)の詳細について発表します。
【調査結果】
⇩クリックするとグラフが⇩
全体 
男女別(世代合算)
世代別(男性)
世代別(女性)


[補足的情報]

◆今回の調査では、男性と女性の回答傾向に大きな異なりがありました。東京、大阪など各地合算での数値では「自衛のための戦争」について、男性ではこれを「認める」と答えた人が65.3%で多数を占めましたが、女性は逆に「認めない」が58.2%で多数を占めました。同じく、「戦力としての自衛隊」について、男性ではこれを「認める」と答えた人が77.9%で圧倒的多数を占めましたが、女性では55%にとどまりました。
◆この「自衛のための戦争」を「認めない」と答えた女性に対して、「もし、よその国家や武装組織が日本を攻撃してきたらどうすればいいとお考えですか?」と訊ねたら、こんな答えが返ってきました。
・日本には攻めてこないと思う。
・外交の力で攻撃されないようにすればいい。
・たとえ自分や家族が危険な目にあってもいい。戦争には反対。
・戦争は反対だけど、個人的には抵抗する。
・降参したほうがいい。そのほうが犠牲者は少なくて済む。
・警察や機動隊、海上保安庁に守ってもらう。
・日本は戦争しないで、米軍に戦ってもらえばいい。
・本当は認めてもいいと思ってるんだけど、そう言っちゃうと、今の政権が調子に乗ってすぐに戦争を始めちゃいそうだから。
◆また、「戦力としての自衛隊」を「認めない」と答えた女性に対して、「災害救助活動だけでいいなら、自衛隊の戦力放棄、武装解除を求めますか?」と訊ねたら、以下のようなやりとりになることが多かったです。 「それは求めません」 「なぜですか?」 「だって、今の自衛隊は戦力じゃないですから。災害救助や防衛のための組織ですよね」 「防衛であっても、それを行うのは戦力では?」 「戦力じゃなくて防衛力だと思います」
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「(戦力放棄、武装解除)は求めません。今あるものはあってもいいです。戦力としての自衛隊は認めないですが」
「あってもいいというのは、認めるということですよね」
「いいえ、(戦力は)認めないけど、わざわざ武装解除することもないということです」
「つまり、今のまま置いておいて、もしもの時は自衛隊が戦ってほしいと?」
「うーん、難しいけどそういうことなのかもしれません」
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こういった女性の回答、考えに対する 元自衛隊員・藤原純子さんのコメントです。 災害救助活動だけでいい、戦力としての自衛隊は「認めない」、自衛戦争も「認めない」と言うなら、「自衛隊は武装解除すべし」とはっきり言ってほしい。主権者である国民がそう命じるなら自衛隊員は喜んで従うでしょう。そうすれば解釈改憲でズタズタにされている憲法9条の本旨、つまり「戦力は保持しない、交戦権は認めない」が具現化されます。 「認めない」と言いながら、武装解除を求めないのは、もし有事になれば自衛隊員が戦えばいいと考えてるからですよね。戦わせるならきちんと認めるべきです。そして憲法にも戦力としての自衛隊の存在や厳しく自衛に限った戦争・交戦について「認める」と書き込むべきです。
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◆「自衛のための戦争」「(戦力としての)自衛隊」について、これを「認める」と答えた人のうち(憲法9条との整合性を図るために)これを「改める必要がある」と答えた人は、「自衛のための戦争を認める」では24.3%。「(戦力としての)自衛隊を認める」では18.6%でした。
【「認める」という人の中で、憲法9条との整合性を図るための改憲の必要性の有無についての考え】
自衛戦争を認める  改憲の必要あり  必要なし     わからない・無記入
男性 222人    55人 24.8%    143人 64.4%     24人 10.8%
女性 140人    33人 23.6%   93人 66.4%   14人 10.0%
男女 362人    88人 24.3%    236人 65.2%   38人 10.5%
※必要あり+必要なしの合計は324人 それを母数とする「必要あり88人」の%は27.2%です。

戦力としての
自衛隊を認める  改憲の必要あり  必要なし    わからない・無記入
男性 258人   47人 18.2%    177人 68.6%   34人 13.2%
女性 182人   35人 19.2%    120人 65.9%       27人 14.8%
男女 440人   82人 18.6%    297人 67.5%   61人 13.9%
※必要あり+必要なしの合計は379人 それを母数とする「必要あり82人」の%は21.6%です。

[注]
今年5月3日付の朝日新聞に掲載された世論調査結果では、「9条を変えるほうがよい27%」「9条を変えないほうがよい68%」となっています。この変えるほうがよいと答えた27%の人が「それはどうしてですか?」という問いに対して答えた(選択した)理由は、
・国際平和に、より貢献すべきだから。
・今の自衛隊の存在を明記すべきだから。
・日米同盟の強化や東アジア情勢の安定につながるから。
がほぼ3割ずつ。 これに対して今回の私たちの調査での設問は、改憲すべき理由を限定して訊ねています。調査用紙にはこう記してあります。〈この「自衛戦争をするかしないか」に関して、あなたが⓵で選択した考えを、日本の国家意思(国としての考え、姿勢)とするには、今の憲法9条との整合性を図るために、これ(9条)を改める必要がありますか? その必要はありませんか?〉 つまり、自衛戦争を認めると答えた人に、その考えを国家意思にするには9条との整合性を図るために改憲する必要があるかないかと問うています。そして、そのために改憲の必要ありと答えた人が 24.3%いたということです。 そう答えた人に対して「では、どんなふうに改めればいいか?」と訊ねたら、返ってきた答えはこうでした。
・9条2項の「戦力は保持しない」「交戦権は認めない」を「自衛のための戦力は保持する」「自衛のための交戦権は認める」と改める。
・「自衛のための戦力として自衛隊の存在・活動を認める」と明記する。
・自衛隊を自衛軍として明記すべし。
・どこの国とも軍事同盟を結ばない。非同盟・中立を謳いつつ軍隊保持と自衛戦争を認める。 ・海外派兵は認めないと明記して、専守防衛を徹底させることを明文化すべし。
・政府や法制局の解釈で事実上認めるというのは危険。交戦権を認める、自衛戦争は可、戦力としての自衛隊を認めると憲法に明記すべきだ。(男女問わずこの意見多し) 逆に、「自衛のための戦争」「(戦力としての)自衛隊」は認めるが、憲法9条を「改める必要はない」と答えた人に対して、「それでは現行憲法との整合性が図れないとは考えませんか?」と訊ねたところ、以下のような答えが返ってきました。
・現実的には認めているのだから、わさわざ9条を改める必要はない。(男女問わずこの意見多し)
・政府がある程度の解釈で対処するのは仕方がない。
・北朝鮮や中国が今のような状況だから「認める」と答えているのであり、本当は認めたくない。なので、改憲などしないほうがいいと思っている。
・現行憲法は侵略戦争は禁じているが自衛戦争までは禁じていない。なので改憲の必要はなし。
・戦力保持も交戦も認めてないけど、実際には戦力としての自衛隊は存在するし安保法制によって戦争もできるんだから、改憲の必要はなし。解釈でいけばいい。
・戦力として自衛隊を保持するというのは、9条2項に反しているかもしれない。だけど、改憲の必要はない。なぜなら国会が承認した防衛予算によって自衛隊は存在し活動しており違法な存在ではないのだから。
※この人たちはいずれも9条の条文を改める必要はないと言っています。つまり一般的な世論調査では「護憲派」「9条支持」に分類されています。
◆このほかの調査員と回答者とのやりとりを紹介します。
●60代の男性 設問の「自衛戦争」という表記がおかしい。自衛隊が戦うことになったとしても、それは「防衛」であって「戦争」ではない。だから、9条に反していないし改憲の必要はない。」 (調査員)防衛のために武力によって戦うのも「戦争」ですよね。例えば日中戦争は中国側にすれば「防衛」だったけど、国際的には「日中戦争」と呼んでいます。 よその国のことは知らない。とにかく、この先自衛隊が戦うことがあるとすれば、それはすべて「防衛」であって「戦争」じゃない。
●20代の男性 自衛隊は災害救助を任務とする部隊と戦力として防衛・交戦をする部隊とに組織を完全に分けるべきだ。それで、前者は志願制、後者は徴兵制にすればいい。後者も志願制だと、結局、金持ちの息子は兵士にならず、貧乏人ばかりが仕方なく兵士になるということになるから。
●50代の女性 個人の自衛権は認められるべきだが、国家の大義名分で戦争されるのは嫌。だから自衛戦争も認めません。自衛隊は災害救助隊として特化すればいい。軍隊としての機能は不要です。
●30代の男性、僧侶 現状では自衛隊も自衛戦争も認めざるを得ないし、論理的に考えれば、それに合わせて憲法9条を改めなければいけない。ただ、ずっとそれでいいとは思っていません。例えば、30年後に「完全武装解除」という目標設定をして毎年10%ずつ「戦力」を削減していくことを決めるといったことを始めるべきではないでしょうか。
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[自衛のための戦争]、[(戦力としての)自衛隊]について、 両方とも「認める」。あるいは両方とも「認めない」。多くの人の回答はそうなっていますが、中には「認める/認めない」、「認めない/認める」、あるいは「認めない/無記入」と回答した人がいます。その人たちの「理由」を紹介します。
「認める/認めない」の人
・自衛隊は「戦力」ではなく「防衛力」のままでいい。「戦力」になると怖い。
※この人は、現在の自衛隊は「戦力」ではないという認識です。「自衛のための戦争」を認めるのは、それが「防衛」で戦争ではないという考え方をしています。 「認めない/認める」の人(このパターンは男女とも相当数いる)
・自衛であっても戦争は嫌だが、念のために「戦力としての自衛隊」があってもいい。抑止力になるから。戦争が嫌だからこそ認めたい。
・自衛であっても戦争には反対。でも、「戦力としての自衛隊」は実際に存在するのだから、認めるしかない。
※こういう意見の人が多数。ただし、「認めるしかない」から憲法に明記する改憲を、という意見と「認めるしかない」けど、改憲はせずにこのままでいいという意見に分かれた。
「認めない/無記入」の人
・自衛であっても戦争には反対だけど、「戦力としての自衛隊」は実際に存在するのだから認めるしかない。そうは思うけど、やっぱり戦力は認めたくない。だから、無記入にする。 …………………………………………………………………………………………
「自衛戦争/戦力としての自衛隊を認めない」と答えた人の中に、ごくまれに「改憲の必要あり」と回答している人がいる。その人たちの考え、意見。
・政府の解釈改憲によって9条の元々の精神、本旨が侵されている。絶対に侵されないような条文に書き改めるべきだ ・わかり易い言葉で細かく示すべし。国民の大意をもって承認されるべきであり、解釈の違いでどうとでもとれるという状態を改めたほうがいい。
・自衛隊は武装解除し「災害救助隊」に特化すべきで、それを憲法に記すべきだ。。