投票用紙と賛否の投票例

大阪市の[5.17住民投票]について(連載全3回の1)


添付の画像は、5.17住民投票で使われる「投票用紙」と、その賛否の記入例です。そして、この投票用紙には、[大阪市における特別区の設置についての投票]と記してあります。つまり、今回の住民投票で主権者・市民に問われている案件は、3月に大阪府・市両議会で可決・承認された「特別区設置協定書」の中に盛り込まれた「特別区の設置」です。賛否を問われているのは、厳密に言えば[都構想]ではないし、当然ながら維新の党や橋下徹氏の政治姿勢などではありません。
投票まであと1カ月というこの段階で、ほとんどの大阪市民は、自分たちが主権者として住民投票で最終決定する事柄についてほとんど理解していません。大阪市内に住む私には、近隣の人々との会話・交流を通してそれがよくわかります。このままでは、そういった「低い理解」で大阪市の未来を左右する大問題を決する住民投票の投票日を迎えることになるでしょう。
当の大阪市民でさえそうなのだから、他の自治体・地域の人々が、実施される「5.17住民投票」について理解しているはずはなく、ここでは、初歩的なことから解説します。
◆「協定書」とは何か?
2年前、大都市法に基づき、大阪府・大阪市特別区設置協議会が設置されました。この協議会は、府知事、市長、府・市両議会の議員を委員とするもので、「新たな広域自治体」と複数の「特別区」(公選区長、区議会を置く基礎自治体)を設置するための議論を重ねてきました。その議論の末に、特別区の区割りや行政サービスの事務分担などを整理して取りまとめたものが「特別区設置協定書(案)」です。
この案は、大阪府・市各議会で審議され、3月に維新、公明議員の「賛成多数」で承認されました(自民、OSAKAみらい、共産は反対)。そして、「60日以内に、特別区の設置について選挙人の投票に付さなければならない」(大都市法第7条)という規定に則り、大阪市民による住民投票を5月17日に実施することになったのです。

◆今回の住民投票の特徴
憲法95条に則った特別法の是非を問う住民投票。地方自治法に則った議会解散、首長・議員解職の是非を問う住民投票。市町村合併や原発建設、米軍基地建設などをテーマに、これまで日本で実施された条例制定に基づく住民投票(406件以上実施)。このように、住民投票にはいくつかの種類がありますが、「人」を選ぶ選挙とは異なり、「事柄」を自身で選択するという住民投票の本質については、いずれも同じです。
ただし、条例制定に基づく住民投票と今回の大都市法に基づく住民投票は、いくつかの点で異なっています。
▼まず、今回の大都市法に則った住民投票は法的拘束力があるという点が違います。条例に基づく住民投票では、(首長や議会は)「投票結果を尊重する」ことを求められてはいるが、従うとはなっていません。これは、そう記すと、地方自治法に定められた議会の権限を侵すことになるからです。一方、今回の大阪市の住民投票では、賛成多数という結果になれば、約2年後に協定書通りに特別区が設置され、反対多数になれば設置されずに現状のままということになります。
▼次に、投票権者に違いがあります。条例制定に基づく住民投票では、投票権者の範囲を実施自治体が条例などによって自由に決められるので、18歳以上とか、16歳以上とか、なかには、長野県平谷村や沖縄県与那国町のように中学生以上に投票権を認めたところもありました。また、永住外国人についても、これまで実施した自治体の6割ほどが認めています。
これに対して、今回の大阪市の住民投票での投票権者は、公職選挙法に規定する選挙人名簿を用いており、20歳以上の日本国籍を有する者となっています。(大都市法施行令第4条2)
※以下、4月18日掲載の第2回に続く