◆名古屋(10/3)、神戸(10/6):市民自治、国民主権、立憲主義にとって重要な2つの問題を取り上げ、わかりやすく解説するセミナーを開催します。
[テーマ1]
政府の安保法制・戦争法案ごり押しから導き出すべきこと/行政府、立法府への多数の異議申し立てを生かし、暴挙を覆すための制度の導入を
世論調査によると、安保(戦争)法案を廃案にすべきだと考えている人が6~7割に達している。国会前をはじめ、各地で集会・デモが開催され、大勢の人が参加した。
にもかかわらず、政府および国会で多数を占める自民党、公明党は、この違憲の法案を来週半ばにも可決・成立させようとしている。
「民意を無視し、憲法と立憲主義を侵す政治を止められない、くやしい」
「民意とのねじれを法的強制力をもって解消させる手立てはないのか」
そういった嘆きや怒りの声をたくさん見聞きする。
そして、このあと聞こえてくるのは「自民党・安倍政権を倒すために次の参院選、衆院選でわが党に投票してください」という共産党や民主党の訴えだ。そうした訴えを行うことは政党として当然のことで非難する気はない。主権者である私たちが法的拘束力を得てできることの代表的な行いは選挙であり、良質だと思える議員を選出することは間接民主制の基本だ。
ただし、それは日本ではそうだということであり、諸外国では、日本とは異なる「異議申し立て」の有効な手を主権者が持っている。スイス、イタリアなどでは、国会が制定した法律を、主権者の署名・発議で国民投票にかけ廃止したり、改正したりしている。
最近では、2011年にベルルスコーニ政権下のイタリア国会で可決・成立した「原発を稼働させるための法律(原発再開法)」の廃止を求める直接請求が反対派の人々によって行われ(憲法に規定されている50万筆以上の署名を獲得)、同年6月12、13日に「原発再開法を廃止するか否か」を問う国民投票が実施された。その結果、投票者の94%が廃止賛成に投票し、憲法の規定に則り、この法律は廃止された。
このような制度が日本にもあれば、今回の安保法制は、成立後に「廃止の是非」を国民投票にかけることができた。日本における現行制度では、異議申し立ての集会・デモは憲法で認められており、実際、今回も国会前や各地で多数の人たちが「廃案にすべし」という声を上げた。だが、法制度的には、たとえ100万人が国会を取り巻こうが、この法案あるいは法律を葬り去ることはできない。今こそ、「異議申し立て」のデモや集会への参加と並行して、こうした制度を導入する強力な運動を展開すべきではないか。
道理に満ちた話なのに、なぜこうした動きが日本で起こらないのか。それは、残念ながら、私がそうした呼びかけ・提案をしても、この20年、日本のリベラルや護憲派の人たちの多くは、支持するどころか「憲法改正につながるから反対…」 という筋違いの「理屈」で、こうした制度の導入に背を向け続けている。そして彼らは、集会、デモ、選挙での対応・反撃 を訴えるばかり。それでは、本当の国民主権、市民自治をこの国に実現させることは難しい。それは、この半世紀の歴史が証明している。
[テーマ2]
「解釈改憲=大人の知恵」の歴史と問題点
解釈改憲による「違憲の安保法制」が成立しようとしている。憲法が破壊され、国民主権と立憲主義が侵される日本。とはいえ、それは安倍政権から始まったことではない。「戦争放棄・軍隊不保持」を謳う9条を是としながら、私たちはこれまで、歴代政権が進める再軍備のための解釈改憲を「大人の知恵」として受け容れてきた。その護憲・改憲両派の欺瞞を歴史的事実を示しながら炙り出し、「9条と安保・自衛隊」問題の本質をとらえる。
「朝日新聞」が2015年6月下旬に実施した憲法学者209人に実施したアンケートによると、122人の回答者のうち、安保法案は「違憲」だとした人は104人。「合憲」だとした人は2人だった。
このアンケートでは、他に「現在の自衛隊の存在は憲法違反にあたるか?」「憲法9条の改正についてどう考えるか?」という設問もあるのだが、「自衛隊は違憲」と回答したのは、青井未帆、吉田栄司、田島泰彦、水島朝穂ら50人(41%)で、「違憲の可能性あり」としたのは27人(22%)。
一方、「合憲」としたのは小林節、長谷部恭男ら28人(23%)だった。
さて、それでは「自衛隊は違憲」だと回答した学者の中で、9条は改正すべきだと答えた人が何人いるかというと、ゼロ、一人もいない。前述の青井未帆、吉田栄司、田島泰彦、水島朝穂、みなさん「改正の必要なし」と答えている。つまり、自衛隊は9条違反だが、9条を改める必要はないという考えだ。ということは、この方々は、9条は改めず自衛隊の存在を改めて立憲主義をまもるべしと考えているということになる、はずだ。論理的に考えれば。
だが、実際には、事実上、自衛隊の存在を受け容れている。「自衛隊は違憲」と回答した50人の学者も、大多数の国民同様、今回の安倍政権が行なった解釈改憲以前までの状態なら、自衛隊の存在を容認したまま9条を改める必要もないというのが本音だ。要するに、自衛隊の存在と9条の共存を「大人の知恵」として受け容れるというものだ。だが、果たしてそれは善き知恵なのだろうか。
セミナーでは、受講生との意見交換も行いながら、問題の本質に迫っていきたい。
※集団的自衛権・安保法制という解釈改憲に反対するのは当然のこと。問題はそれ以前の解釈改憲への見解だ。戦力としての自衛隊の存在、個別的自衛権の行使としての自衛戦争を認める解釈改憲を肯定するのか、それとも9条の本旨通り自衛でも戦争は認めないのか。国会での「違憲」発言で名を馳せた小林節、長谷部恭男両教授は前者。私は後者。戦争するなら国民投票で主権者の承認を得て改憲すべきだと考えている。
◆名古屋10月3日(土)15時半~17時半
会 場:名古屋会議室名駅モリシタ名古屋駅前中央 第6会議室
(※名古屋駅東口徒歩3分 中村区名駅3-13-31-7F 電話052-563-0758)
参加費:500円(会場使用料に充当します)※定員25人
◆神戸10月6日(火)19時~
会場:認定特定非営利活動法人 まち・コミュニケーション
653-0014 兵庫県神戸市長田区御蔵通5-211-4-101(みくら5)(地図)
TEL:078-578-1100 FAX:078-576-7961
参加希望者は前日までに下記宛てに申し込んで下さい。
info.ref.jp@gmail.com(定員─30人─になり次第、締め切りとさせていただきます)
『「解釈改憲=大人の知恵」という欺瞞』。ぜひ御一読ください。