【連載1の続き】
▼条例制定に基づく住民投票を実施した自治体の中には、成立要件として「最低投票率」や「絶対得票率」を設けたところがいくつもありますが、今回の5.17住民投票のルールの基となっている大都市法8条には、(関係市町村及び関係道府県は、住民投票において)「有効投票の総数の過半数の賛成があったときは、共同して、総務大臣に対し、特別区の設置を申請することができる」と記してあるだけで、成立要件については全く触れていません。したがって、投票率がどんなに低くとも、賛否どちらか一票でも多い方が、主権者である大阪市民の「特別区設置」に関する意思とされ、前回(連載1)記した通り、法的な拘束力をもって、行政や議会を縛ることになります。
▼また、議会での議決から投票日までの、いわゆる賛否両派のキャンペーン合戦の期間についても、条例制定に基づく住民投票の場合は、対象案件の難解さや切迫度などの違いから、60日とか、3カ月とか、半年とかいろい設定されましたが、今回は「60日以内」と大都市法に記してあるため、大阪府・市両議会の議決から60日以内の5月17日に実施されることになりました。
たった60日で、市民が案件について深い理解をするのは無理で、私は大都市法を改正し「120日以内」とすべきだと考えます。
◆今回の賛否の争点はどこにあるのか
いわゆる「大阪都構想」を進めるべしとする橋下徹市長は、
(現在の大阪市を解体しての)特別区設置は現在の大阪市民にとっては、政治・行政がより身近になものになる分権化だ。府・市二重行政に伴うムダを削れる…といった主張をしています。
対する反対派は、(大阪市の解体は)政令都市として認められてきた豊かな税財源を使って強力な都市計画を推進する権限を失うことになる。2千億円に及ぶ税金の多くが、大阪市の外、つまり大阪府に流出する。つまり、住民サービスは悪くなるなどと反駁しています。
◆行政の説明責任と「説明会」
大都市法7条の2には、住民投票に際し首長が「選挙人の理解を促進するよう、特別区の設置協定書の内容について分かりやすい解説をしなければならない」と記してあります。
どんな住民投票でも、行政や議会、企業などが、案件に関わる情報について正確かつ豊かなものを開示・発信し、それを投票権者がつかみ学習してこそ、水準の高い住民投票にする可能性を得ることができるのです。そういう点からいえば、上記の規定は住民投票にとって肝となるものです。
大阪市は、今週13日、大阪市・大都市局が作成した「説明パンフレット(全39頁)」172万部を全戸配布しました。そして、14日からは大阪市内のさまざまな施設で朝・昼・晩と1日3回ずつ橋下市長や大都市局の職員が登壇しての「説明会」を開催。これは12日間連続で行なわれます。(3×12で計36回、それに加えて大会場で3回)
始まったこの説明会がすでに問題視され、橋下市長の「説明」は、大都市法に記されている「分かりやすい解説」を逸脱した「賛成投票誘導」になっているという批判の声が反対派のみならず、中間派の人たちからもあがっています。
また、こうした「一方的な説明」を39回も繰り返すのなら、反対派の人が反論したり突っ込んだりできるよう公開討論会を何度か開催すべきだという声も、在阪各局の情報系番組の多数の出演者からあがっています。問題は、その公開討論会への参加を反対派の議員、学者、ジャーナリストらが「橋下市長との討論はやらない」と拒否していることです。
この問題については、次回(4月22日)、詳細にお伝えします。