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大阪市の[5.17住民投票]について(連載全3回の3)


連載第2回の続き

裁判においては、原告・被告双方が、裁判所において、自分たちの主張をしたり相手方の主張に異議を唱えたりします。裁判官や陪審員は、そのやりとりを直接見聞きすることにより、理性的な判断を下すことができるのです。
住民投票における投票権者の判断についてもそれは同じで、住民の深い理解を促すためには、賛成派・反対派それぞれが別々の場所で一方的に自陣の主張を繰り返すだけではなく、一堂に会して公開討論会を開催することが大切です。
これまで、条例制定に基づく住民投票を実施した自治体の中には、公平かつ水準の高い公開討論会を開催したところが多数あります。その事例を幾つか紹介します。

▼新潟県巻町(原発建設/9684日 投票率88.29%)

 連日、賛否両派が『新潟日報』に織り込みチラシ。集会もそれぞれが毎週開催。 

「一堂に会して討論する場を設け、町民に判断してもらう必要がある」と考えた笹口孝明町長が提案して公開討論会を5月17日に町主催で開催。人選については町が口を出さない。誰を呼んでもOK。

賛成派が招いたのは、中村政雄(科学ジャーナリスト、元読売新聞論説委員)

反対派が招いたのは、高木仁三郎(原子力資料情報室代表)

その2人に加えて町民代表が賛否一人ずつ登壇。厨房機器販売の男性と看護師の女性。


▼新潟県刈羽村(プルサーマル導入/
2001年5月27日実施 同 88.14%)

2択ではなく「賛成」「反対」「保留」の3択。

賛否両派が話し合い、公開討論の開催で合意する。

・賛成派が招へい

河野博文(資源エネルギー長官)

佐々木宣彦(原子力安全・保安院長)

近藤俊介(東京大学教授)

・反対派が招へい
澤井正子(原子力資料情報室)
海渡雄一(弁護士)
小林圭二(京都大学原子炉実験所)

聴衆の多くが「聴きに来てよかった。勉強になった」
主催した賛否両派が「開催してよかった」

▼埼玉県上尾市(市町村合併/2001年7月29日 同 64.5%)
さいたま市との合併の是非を問う。
厳しく対立していた賛成・反対両派が話し合い、両陣営が共催する公開討論会を2度に渡り催す。登壇者は3人ずつ、上尾市民同士で論戦。2度とも会場は満杯となり、かなり水準の高い論戦が行われた。

▼長野県佐久市(総合文化会館の建設/2010年11月14日実施 同 54.9%)
市長も議会も賛成していた「会館建設」を住民投票にかけることになり、住民投票とは何か。選挙とはどう違うのかという勉強会を市主催で4度に渡って開催。
20回に及ぶ説明会とは別に、10月16日、11月6日に、市主催の公開討論会を開催し。市民の代表が聴衆の前で意見を戦わせた。

こうした公開討論会を、大阪市の5.17住民投票においても実施すべきだと考え、3月上旬に府議会議員で特別区設置協議会会長の今井豊氏に強く勧めたところ、「開催に賛成する。ぜひやりたい」という返答をもらいました。その後、維新の会の代表であり市長でもある橋下氏からも、秘書を通して「公平にやってくれさえすれば、日時会場などはお任せする。討論の相手は議員であるか否かなどは問わない、どなたが登壇されても拒まない」という返答がきました。
それで、すぐさま、反対派の各党の議員、あるいは、本を出したり、メディアで語ったりして「特別区の設置・都構想」を厳しく批判している学者やジャーナリストらにも登壇を要請しましたが、全員「維新の議員とは討論してもいいが、橋下市長とはやらない」という返答でした。
こうして、反対派は、集会やチラシなどで「特別区の設置」が誤った選択だと市民に訴えはするが、橋下市長との公開討論会は出ないという戦略を取ったまま、前回の連載で紹介した計39回に及ぶ「説明会」に突入したのです。

前回も書いたことですが、多くの市民は、市長の一方的な説明を聴くのではなく、反対派の言い分や異議も聴きたいと思っています。公開討論会をやれば反対派が不利になるとか損だとかいうことより、先ずは市民の理解を深めるためにという観点から、反対派の皆さんは姿勢を改めるべきだと私は考えます。
4月30日には、弁護士会が主催する公開討論会に、橋下市長と自民党の柳本市議が登壇することになりました。(※橋下氏が出席をとりやめたため、主催者は4月28日に開催中止を決定)。市民対市民、議員対議員など、いろいろな公開討論会を投票日までに多数開催することを賛否両派には改めて求めたいし、そのために大阪市民が行動することを期待します。