スコットランドの国旗

[英国からの独立]の是非を問うスコットランドの住民投票(実施前の解説)


英国から独立するか?留まるか? それを決めるスコットランドの住民投票は、9月18日(木)に実施される。

当初、反対派が[7:3]あるいは[6:4]で優勢と伝えられていたが、ここにきて独立賛成派が支持を急増させ、今ではほぼ互角の争いとなっている。

なぜ、スコットランド国内で「独立すべし」という声が大きくなったのかについては、すでにさまざまなメディアで報じられているので、ここでは触れません。むしろ私は、メディアがあまり伝えていない事柄について[自治体国際化協会ロンドン事務所]のリポートを基に、紹介し解説したいと考えています。

12年10月、キャメロン英国首相とスコットランドのサモンド首席大臣は、スコットランドの独立の是非を問う住民投票の実施に向けて両政府が協力することで合意(エジンバラ合意と呼ばれるAgreement-final-for-signing)。これを受けて、両政府は、「98年スコットランド法」に則り、スコットランド独立の是非を問う住民投票の実施に必要な立法措置をとる権限を、英国の国会からスコットランド議会へ移すこととし、両国の議会の同意を得た。これにより、この住民投票に関しては、実施方法などを含めすべてスコットランド政府が執行することになった。

[1]この住民投票に法的拘束力はあるのか?

日本の場合、現行の憲法下、地方自治法の下では、これまで実施された(住民投票条例の制定に基づく)410件余りの住民投票はいずれも法的拘束力はないし、まだ一度も行われたことはないが「原発」にせよ「安保」にせよ、日本では憲法改正以外のテーマでは法的拘束力のない諮問型の国民投票しか実施できない。

2012年にリトアニアが日立製の原発建設の是非を問う国民投票を実施した際も、国会議員の発議によって実施されたものの法的拘束力はなかった。ただし、2011年にイタリアで行われた原発稼働の是非を問う国民投票は憲法の規定に則り実施され、法的拘束力もあった。

では、今回のスコットランドでの住民投票はどうか。「明確な法的根拠を持つ」としながら、「両国政府は投票結果を最大限尊重する」という記述にとどまっている。

[2]だれがこの住民投票を発議したのか?

07年以降、スコットランドでは英国からの独立を訴えるスコットランド国民党が政権を掌握している。前述の通り英国議会が住民投票に同意したことを受け、スコットランド政府は昨年3月、「スコットランド独立住民投票法案]など2つの法案を議会に提出。これらは、投票日、選挙権、投票用紙に掲げる質問の文言、賛否両陣営によるキャンペーン費用の上限額やその他のルールなどについて規定している。

特筆すべきは、投票権者の年齢を16歳以上としていること(英国の選挙権年齢は18歳)。スコットランドの未来を決める住民投票に若者の参加を認めるもので、すばらしい判断だ。東京、大阪などで繰り広げられた「原発」都民投票条例、市民投票条例の直接請求において、私たちがその条例案に「16歳以上」と記したことに対して、これを「子どもに何がわかるのか」と批判した人が少なからずいたが、スコットランドでは実現させているではないか。

[3]投票用紙に記されている設問はどうなっているのか?

スコットランド政府が提案したのは Do you agree that Scotland should be an independent country?

選挙管理委員会が提案し政府が同意したのは Should Scotland be an independent country?   Yes/No

世界が注目するこの住民投票により、日本において、より多くの主権者が住民投票や国民投票の効用を理解し、積極的にこれを活用しようと考えるようになればいいと願っています。これまでにもお伝えしてきましたが、スコットランドでのこの住民投票については、私たち情報室の運営委員でもあるジャーナリストの大芝健太郎さんが現地取材を行い、このホームページを使ってリポートしてくれることになっています。どうぞお楽しみに。