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「イギリスでのEU国民投票から学ぶべきこと──日本での改憲発議に絡めて」(その2/全3回)


イギリスでのEU国民投票から学ぶべきこと(その1)の続き

イギリスでのEU国民投票。日本ではテレビのキャスターやコメンテーターらが、「大多数のイギリス人が詐欺師のような政治家に騙されて愚かな投票をした」といった発言をしているが、「離脱」に投票した1741万742人のうち、独立党のファラージ党首やボリス・ジョンソン前ロンドン市長のウソの宣伝を鵜呑みにして投票した人など一握り。数百万人がテレビ視聴したBBC主催の公開討論会においても、彼らは「嘘つき、ボリス、恥を知れ!」とサディク・カーン現ロンドン市長に厳しく批判されるなど、キャンペーン合戦の中で数々の「嘘」は暴かれていた。それでも、多くのイギリス人が選択に迷いながらも、最後に「離脱」に投票した。騙されたまま投票した人は全体の中の一部だ。

離脱派(左)残留派(右)が『メトロ紙』に出した全面広告。オモテ表紙にもウラ表紙にも

離脱派(左)残留派(右)が『メトロ紙』に出した全面広告。オモテ表紙にもウラ表紙にも

現場に足を運ばず、「離脱」に投票した人の話をきちんと聞いたこともない日本の軽薄言論人が「イギリス人はみんな騙されて離脱に投じた。バカだ愚かだ」なんて言うのは事実誤認だし傲慢。馬鹿なのは「違憲立法」をごり押しした内閣、政党、議員を今回の選挙でもまた支持している多数の日本人のほうだ。よその国の主権者を批判する前にまず自分たちの主権者としての愚かさを理解し反省すべきだと思う。
いずれにしても、今回の国民投票に際して、大多数のイギリス人は国の将来について、一人ひとりが真剣に考え、家族や友人らと話し合って結論を出した。そのことが何より大切で、その価値は彼らが出した結論が「離脱」であれ「残留」であれ変わりはしない。
今回の国民投票は、投票結果に法的拘束力のない諮問型だったが、キャメロン首相の言うように、主権者の多数が仮に「誤った選択」をしたのだとしても、一度は受け入れるのが民主主義、国民主権に適っている。今回の結果を無効にせよとか、即刻国民投票をやり直せとかいう主張には同意しかねる。改めて国民投票をするなら、実施の是非を争点にした議会議員選挙をするなど政治的手続きを踏んだ後で行うべきだ。

『ハフィントンポスト紙』の記者をしているという彼女は、どちらに投票するか悩んだ末、前の夜に決断したという。投票所前で

『ハフィントンポスト紙』の記者をしているという彼女は、どちらに投票するか悩んだ末、前の夜に決断したという。投票所前で

今回の国民投票後に、はっきりとわかったことがある。それは、民主主義や国民主権について、誰が正しく理解・認識し、誰が曲解しているのか。結果が「残留」と出たら民主主義は守られ国民投票実施も正しいと言うが、「離脱」と出たら民主主義は壊され国民投票実施は間違いだったと言う。テレビや新聞に出てきて、したり顔でそう語る言論人の多いこと。知人友人のキャスター、評論家、ジャーナリストらの9割以上が、民主主義や国民投票という制度に関してそういう理解、そういう認識でいることがわかった。ふだん、原発や基地問題なんかで、とてもまともなことを言っているのに、民主主義、国民投票についてこんな薄っぺらい理解しかしてないのかと唖然とした。まさにリベラル擬きだ。

さて、自民、公明が参議院でも3分の2の勢力を確保し、今後の展開次第では日本で9条改憲の是非を問う国民投票の発議がなされ、国民投票が実施される現実性が増してきた。そうした状況の中で、私たちがイギリスでの国民投票のルールに倣うべき点は多い。カネさえつぎ込めば(投票日の15日前までなら)いくらでもテレビCMを流せるという日本の今のルールを改めて放送の完全公平化を期するなど、実施までに現行の国民投票法を一部改正したり必要な規則を作ったりする必要がある。イギリス国民投票のルールの詳細は⇒ココ Q.4に記載

「イギリスでのEU国民投票から学ぶべきこと(その3)」日本での改憲発議に絡めてに続く