投票日3日前のエディンバラと住民投票の対立構造


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エディンバラのメドウス公園では投票日前の最後の週末、賛成派、反対派の両派による最後の広報活動が行われた。両派と言っても反対派のブースは一カ所のみ、賛成派のブースが並び、歩道にはセント・アンドリュース・クロスと呼ばれるスコットランドの国旗がたなびいてる。

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↑反対派のブース。資料や風船などを配っています。

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↑独立反対派と賛成派の議論が路上で急に始まる。
徐々にギャラリーが増えてきて白熱した論争になった。

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↑スコットランドの旗を掲げて公園を練り歩く人たち。
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若いキャンペナーを見つけたので声を掛けると、なんと14歳。
「投票権はないけれど、学校でもみんなと独立をどうするか議論している。」と言う。

 

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↑賛成派のブースで見つけた、独立に何を望むかを書いた短冊のような札。

 

今回の住民投票の対立構造について書きたいと思う。

「独立」住民投票の実施前の解説については今井一さんのこちらの記事をどうぞ。

http://ref-info.com/scottishindependence/

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ここで注目すべきなのが普段、対立しているはずの保守党と労働党が共に「独立反対派」として共闘している点だろう。1999年のスコットランド議会の開設を問う住民投票では、労働党は自治権拡大に向けて賛成派にまわり、保守党と争った。しかし今回の独立には反対なのだ。それはなぜかと言うと、これは実は国政との密接な関係があるのだ。

中央議会の定員は650人で与党である保守党が303人、最大野党である労働党は255人である。このうちスコットランド選出の議員は労働党が41人、保守党が1人である。この結果を見てわかるように、労働党にとってスコットランドは大事な票田であり、強力な支持基盤なのである。

スコットランドが仮に独立してしまった場合、スコットランド選出の議員をそのまま抜かすと、中央議会での労働党の議席の16%を失うことになる。また中央議会の定員は591人となり、保守党が302人、労働党は204人になり、保守党に単独過半数を許し、労働党がまた与党に返り咲くのは極めて難しくなる、というのが労働党の表に出さない本音である。

スコットランド国民党はもちろん党是である独立を求めている。そしてスコットランド緑の党も独立に賛成。独立した方が、中央集権的なイギリスから「より民主的なスコットランドになる」とのこと。

イングランドは連合王国の経済規模が小さくなり、ポンドの信用が下がり、北海油田の税収を失うことを恐れているので、独立に反対している。

ウェールズもスコットランドと同じように、イングランドとの関係の不公平感を抱いているので、独立には賛成。北アイルランドも同じような状況だが、宗教によって考え方が違うので、( )とした。

また、貧困層に支持が高いのが賛成派、北欧のような高福祉の世界を目指しているので、逆にお金持ちには負担が大きくなることを恐れて、反対が多い。

また、お年寄りは年金や、国民保険などが維持できるのかどうか、変わるということ自体に恐怖を抱いていて独立反対派の人の方が多い。しかし、相対的に若い人の方が支持率には高い。これはインターネットなどでも情報が得られることが影響しているのではないかと賛成派の人は言う。

 

独立支持派の主な理由
・スコットランドの民意がイギリス中央政府に反映されていないから。
実際に現在スコットランド選出の議員59人のうち保守党は1人しかいないのに、イギリス議会では保守党が与党を担っている。このようなスコットランドの民意と中央政府とのねじれが頻繁に起こってしまっている。

・スコットランド沖にある北海油田の利益が中央政府に吸い取られてしまっているから。北海油田の利益がスコットランドに直接得られることで、少なくとも今よりは豊かにと主張している。

・スコットランドに核兵器を置いておきたくないから。
スコットランド最大の都市グラスゴウから16kmほどしか離れていないところに、イギリス軍の原子力潜水艦などの核兵器が配備されていおり、住民は不安な日々を送らされている。

独立反対派の主な意見
・今まで通りポンドを使えるかどうかわからないから。
独立賛成派はポンドを使うと主張しているが、イギリス中央政府は「イギリスから抜けるということは、ポンドからも抜けることだ」と主張している。実際の交渉が始まるのは独立賛成派が住民投票で上回ってからになる。

・経済が悪化するから。
スコットランドで営業している企業のうち「独立するならばスコットランドから撤退する。」という企業もあり、そうなることで今までと同じレベルの社会保障(年金や国民健康保険)を維持するためには税金の値上げをしなければならないのではないかと心配している人もいる。

・EUに加盟できるかわからないから。
もし、イギリスから離脱してEUにも入れないとなれば、世界から孤立してしまう可能性があるということを心配している人もいる。