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5.17大阪住民投票で得たこと


大阪市を5つの特別区に変えるかどうか──その是非を大阪市民に問う住民投票はいよいよ明日投開票となります。
結果が出てから書くと、素直に読み込もうとせず、「賛成多数だったから」、「反対多数だったから」こんなことを書いているという人が必ず出てくるので、前日(5.16)の午前11時にアップしておきます。

「原発」にせよ「市町村合併」にせよ、一般的に国民投票・住民投票での決着を否定する人は、昔は、「議員に比べて一般の市民は理解、判断能力が劣っている」と言って憚りませんでした。
今は、こんなふうに言う「自称リベラル」が多いです。
「国民投票・住民投票は、投票する人が十分な情報を得た上で勉強することが不可欠。そうでなければ愚かな投票になってしまう。今の日本人(〇〇市民)は、この案件(原発とか合併とかいった投票対象)について勉強どころか関心がない。ちゃんと勉強してから、国民投票・住民投票をやると決めるべきです」

尤もらしいことを言ってますが、したり顔でこんなことを言う人は、国民投票・住民投票の現場、実態を何も知らない人です。例えば、88.29%という高い投票率と豊かな議論、冷静な考慮を実現した巻町の「原発」住民投票にせよ、上尾市や米原町の「合併」の選択を問うた住民投票にせよ、辺野古の新たな米軍基地建設を問うた名護市民投票にせよ、スウェーデンの「原発」国民投票にせよ、どこでもそうですが、多数の住民が強い関心を持ち、既に案件に対する理解が進んでいたから住民投票・国民投票で決めようとなったのではなく、住民投票・国民投票で決着を付けると決まってから、人々は関心を強め勉強も議論もしたのです。最初から、多数の人が強い関心を持ち案件について理解をしていたというところなどありません。

今回の大阪での住民投票もそれは同じ。もし「最終的に議員が決める」ということだったら、大半の市民は自身で勉強せず、議員任せにしていました。一人ひとりの市民が最終決定権を行使することになったからこそ、関心をもち勉強もしたのです。39回に及ぶ市主催の「説明会」がほぼすべて満席となったのはその証で、おそらく、この説明会の準備をした市職員は、普段はいいかげんに見える大阪市民の「勤勉さ」に驚き感激したことでしょう。私も意外でしたが、これは大阪市民だからではなく、他の自治体住民でも同じ反応をしたに違いありません。
水準の高い住民投票を実現するためには、豊かな情報を、投票権者がいかに掴み、学ぶかにかかっています。しかしながら、今回の住民投票については、議会の議決から60日という期間の短さなど問題点はいくつもあります。例えば、行政から出された情報は、膨大かつ肝心なところは「予測」でしかありませんでした。投票権者の理解を深めるためには、賛否各派が個々に集会や宣伝物などを通して、自陣の正当性を訴えるだけでは不十分で、一堂に会しての公開討論会を開催することが必要。でも、今回、数回に及ぶテレビ討論がなされたことは評価できますが、(弁護士会が主催し、流れたような)橋下市長と反対派の議員、論客が直接対決する公開討論会がついに一度も行われなかったことが残念です。

今回の住民投票は、理想的なものにはなっていませんでしたが、それでも、短い期間の中、チラシその他での「論戦」を見聞きした市民は、ある程度の確信を持って投票したと思います。とにかく、今回の住民投票を通して、大阪市の行政の現状や未来について、相当数の市民が関心を抱き勉強をしたことは確かです。結果がどう出ようがその事実は評価したい。
私見ながら、「賛成多数」となったとしたら、それは橋下徹という人物に対する個人的な人気が高いということ。そしてリスク覚悟で現状を変えてみたいという思いを抱いた人が多かったからでしょう。
逆に「反対多数」となったとしたら、橋下徹という人物の個人的な人気が、一時の隆盛時に比べて下降したことと、先を見通せないまま現状を大きく変えることへの不安を抱いた人が多かったからでしょう。

賛否どちらが多数を制しても、議会や市長が、主権者である市民の意思を無視して勝手に決めたのではなく、一人ひとりの市民が最終決定権を行使して決めたことです。したがって、結果責任については市民が負わねばなりません(市長、議会に責任が全くないとは言わないが)。とにかく、自分の意に反した結果になったからと言って誰かに責任を押し付けるのはよくない。

最後に、経験者の責務として、住民投票後、各党の市会議員は同党の国会議員を通して、大都市法の改正を提案すべきです。
議会の議決から60日以内に住民投票の実施というのを120日以内に実施と。
そして、永住外国人の投票権を認めるべきです。
大阪市初の住民投票を経験した市民の多くは、その価値や魅力を実感したはず。住民投票が今後、議会や市長からの提案ではなく、市民発議で活用できるよう、岸和田市や生駒市などが制定しているような「実施必至型住民投票条例」を、府・市両議会は制定すべきです。